後遺障害等級認定のしくみ
交通事故による後遺障害の認定基準を解説します。
「後遺障害」とは?
一般的な「後遺症」とは、怪我や病気などの治療後に残った、機能障害や神経症状のことを指します。それに対して「後遺障害」とは、交通事故が原因であることが医学的に証明されるとともに、労働能力の低下(あるいは喪失)が認められ、さらに、その程度が自賠責保険の等級に該当するものと定義されています。したがって、事故のために残った後遺症であったとしても、上記の条件に当てはまらない場合は「後遺障害」と認められません。
「後遺障害」の認定を得るために必要なこと
誰が後遺障害等級を認定しているのでしょうか?
後遺障害等級については、保険会社に対して、下記のような必要書類・資料を送付し、審査を受けることで認定されます。
- 必要書類
- ① 自賠責保険支払請求書兼支払指図書
- ② 交通事故証明書、事故発生状況報告書
- ③ 診療報酬明細書及び診断書(毎月発行されるもの)
- ④ 後遺障害診断書
- ⑤ レントゲン、MRI等の画像
後遺障害の内容は、書面で証明する必要があります。
見た目や画像などで判断できる障害だけでなく、見た目だけでは分からない障害(痛みなどの症状)が残っている場合でも、後遺障害等級の認定を得るためには、後遺障害の内容を書面で証明する必要があります。書面に記載されていないに後遺障害ついては、等級認定の審査において考慮されません。したがって、記載漏れや検査漏れなどがあった場合は、大きな不利益を被る可能性があります。
- 書面主義とは?
- 審査が書類の記載内容のみによって行われることを書面主義といいます。書類に記載されている後遺障害の内容が、等級の基準や要件をどれだけ満たしているかがカギとなりますので、書面作成が重要になります。
「等級」別に認定される後遺障害
後遺障害の「等級」とは?
交通事故による後遺障害は、部位や程度によって1~14級までの等級と140種類、35系列の後遺障害に細かく分類されています。これは、労災保険の障害認定の基準がそのまま当てはめられています。交通事故による後遺障害の症状や程度、損害は被害者ごとに異なっており、一人ひとり個別に算出していくことは不可能です。したがって、認定審査の書類内容を予め設けられた基準に照らし合わせて、どの等級に当たるのかを審査するという方法で後遺障害等級の認定が行われます。
等級はどのように決まるのか?
等級は「後遺障害のある部位はどこなのか?」を見ることから始め、続いてその部位にどのような後遺障害があるのか、労働能力の低下の度合いはどのくらいかを見て、等級を認定していきます。
- 等級の決め方の流れ
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- 後遺症・障害のある身体の部位で分類
- その障害が、
腕を切断した等の物理的なものか(器質)、
腕が動かない等の機能的なものかで分類 - その障害でどれだけ労働能力が低下するのか、後遺症・障害の重さ(例えば、視力がどれだけ低下したか)で1~14級を定める
「後遺障害等級認定」には、
3つの決まりが適用されます。- 併合
系列の違う障害が2つ以上ある場合、原則として重いほうの等級によることを言います。ただし、併合による等級の繰り上げについては様々な例外やルールがあります。 - 加重
既に障害をお持ちの方が、交通事故で障害の程度が重くなった場合を言います。賠償の対象は、
(事故後の等級)-(事故前の等級)=差額
になります。 - 準用
障害等級表に載っていない障害については、障害の内容などから等級を定めることを言います。例として嗅覚脱失や味覚脱失などがあります。
認定基準には「あいまい」な部分も
等級認定については、書面で審査が行われますが、そもそもの基準が「局部に神経症状を残すもの(14級9号)」「局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)」といった抽象的な表現となっています。程度や症状をすべて数値化できないので致し方ないのですが、基準があいまいなため、判定する担当者などによって変化することがあり、適正な認定を得られるかは不透明な部分もあります。
等級認定から賠償金提示までの流れ
示談金額は後遺障害等級によって大きく変わります。
交通事故の示談金は、認定される後遺障害等級によって大きく変わってきます。怪我の治療が終わると、病院や医師が作成した診断書、後遺障害診断書、画像等の各種資料を保険会社に提出します。次に、保険会社は損害保険料率算出機構に対して各種資料を送付し、等級認定の審査を依頼します。そこで認定された等級をもとに、示談交渉を行います。
怪我の治療
各種資料を保険会社に提出・診断書(病院・医師が作成したもの)・後遺障害診断書 ・画像等
保険会社が損害保険料率算出機構に等級認定の審査を依頼
等級の認定
認定された等級が妥当でない場合は、再度の認定を求めることも可能です。
認定までの流れ、後遺障害等級、提示額に納得でき ない場合の手続きはこちらへ。